膵臓に急性炎症が起きることにより、突然の元気や食欲の低下、嘔吐、下痢などが生じます。珍しい病気ではなく、かなりの頻度でみられます。
膵炎になりやすい要因としては、肥満、内分泌疾患の存在、高脂肪食の摂取などが挙げられますが、原因がはっきりしない場合も多いです。
診断には主に血液検査と超音波検査が行われます。近年は血液検査が進歩してきたため、一昔前に比べて診断しやすくなっています。ただ、検査の信頼性は100%ではありませんので、検査所見だけではなく症状や経過なども考慮して総合的に判断する必要があります。
治療については、これをやれば確実に治るというような特別な治療法はありません。輸液により循環を改善し、鎮痛剤により腹痛を抑え、制吐剤により嘔吐を止め、抗凝固剤により血液凝固異常の進行を予防し、炎症が収まるまでをしのいでいきます。状態が改善してくるまでには数日間以上かかる場合が多いです。食事は低脂肪食が望ましく、快復した後も続けたほうがよいと考えられています。
急性膵炎では、一般的に入院治療が行われます。当院では、1日1回通院での治療を行うことが多いです。非常に体調の悪い状態がしばらく続きますので、助からないと思われる飼い主さんもいらっしゃいますが、諦めずに治療を続けることにより完治させることが可能となります。
犬が吐いたり下痢をしたりしている場合、一過性の胃腸炎なのか、急性膵炎のような重篤な病気があるのか、判断が難しい時があります。一過性の胃腸炎であれば下痢止めや吐き気止めなどの対症療法でいいのですが、急性膵炎などでは集中的な治療が必要となります。
目安として、下痢や嘔吐だけでなく元気や食欲の低下もみられる場合には重篤な病気があるかもしれませんので、対症療法ではなく各種検査を行ったほうがいいでしょう。ただ、元気や食欲があれば心配ないかというと、そうではない例もたまにあります(異物誤飲など)。いずれにしろ、異状がみられたら早めにご来院いただき、獣医師と飼い主さんで相談しながら診療を進めていくことが望ましいです。