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院長コラム
2023/03/06
【コラム】療法食について

  
今回は療法食についてまとめました。
  
  

療法食は健康に良いわけではない

療法食は健康に良いフードではありません。病気がある動物に仕方なく食べさせるフードです。栄養が偏っていますので、病気がない動物に食べさせると健康を害するおそれがあります。
   
余計なお金を使ってしかも健康に悪いというのはバカみたいですから、病気がない動物には療法食を食べさせないようにしてください。
   
   

万能な療法食はない

どの病気にも適した万能な療法食はありません。
   
タンパク質を減らすと脂肪と炭水化物が増え、脂肪を減らすとタンパク質と炭水化物が増えます。あちらを立てればこちらが立たずという感じです。
   
病気の例を挙げると、腎臓病は低タンパク質、膵炎(犬)は低脂肪、糖尿病は低炭水化物が適しています。異なる病気用の療法食を選ぶと逆効果になってしまいます。
   
複数の病気を併発している場合は、どの病気の管理を優先するかを考え、妥協してフードを選びます。
   
   

獣医師による状態確認の必要性

療法食は、動物の状態を獣医師に確認してもらいながら使うのが基本です。「効果がなければ変更」「病気が治れば中止」「別の病気になれば中止や変更」などの判断が必要となるからです。
   
よくあるのは、「病院で尿石用療法食を勧められ、ネットで買って食べさせ続ける」というパターンです。ずっと食べさせ続ける必要があるかどうかは個々の状況によりますが、少なくとも高齢になったらほぼ必要はなくなります。尿石用療法食は塩分が多い傾向がありますので、心臓病や腎臓病があるのに続けているとそれらの病気を悪化させてしまうおそれがあります。
   
他には、「皮膚病でアレルギー用療法食を勧められ、効いていないことに気付かず食べさせ続ける」「肥満だったので減量用療法食を勧められ、高齢や病気などでガリガリに痩せてきたのに食べさせ続ける」「病院で勧められた療法食を買っているつもりだったが、実は違う製品と間違えていた」などの事例もみられます。
   
これらのようなことが判明した場合は、スルーするわけにもいきませんので説明はいたします。しかし、多くの方は説明を理解できずにそのまま継続されるようです。
   
   

病院の責任か自己責任か

「先生に勧められたとおりのものをネットで買って続けています」と言ってくる方は多いです。5年ぶりに来院してそのように言われたりもします。
   
過去の診察時に療法食を勧めたとしても、その後に動物の状態は変わっていきます。病院以外で購入している場合は動物の状態を把握できませんし、そもそも療法食を続けているかどうかすら把握できません。病院が責任を負い続ける道理はないと思います。自己責任です。
   
   

素人判断について

今はネットやホームセンターで簡単に療法食を買えるため軽く考えて使う方が多いですが、病院以外での購入は自己責任であるということは必ずご承知おきください。それをわかっていない方が多いようです。
   
病院で勧められた療法食を他で買って続けるケースも問題ですが、さらに問題なのは自己判断で使い始めるケースです。
   
具体的には以下のような間違いが見受けられます。

①「高齢だから」という理由で検査もせずに腎臓病用療法食を食べさせる
   
②「先代の猫が腎臓病で亡くなったから」「健康に良さそうだから」などの理由で若いうちから腎臓病用療法食を食べさせる
   
③「血液検査でBUNが高いから」という理由で腎臓病用療法食を食べさせる
   
④「血液検査で肝酵素値が高いから」という理由で肝臓病用療法食を食べさせる
   
⑤腎臓病用と尿石用(下部尿路用)の違いを理解していない
   
⑥アレルギー用療法食を他のフードと混ぜて食べさせる
   
①②
腎臓病用療法食はタンパク質が少ないです。病気がなければタンパク質を摂取制限すべきではありません。腎臓病の予防にもなりません。「腎臓病用療法食は低タンパク質で高脂肪ですけど、健康に良いと思いますか?」と聞くと、大抵の方は「思いません」と答えはするのですが、家に帰ると忘れるのではないかと思います。
   

BUNは様々な原因で高値になります。腎臓病の場合もありますが、そうでない場合もあります。また、腎臓病用療法食には強めのものと弱めのものがあります。自己判断で開始しないようにしてください。
   

肝臓病用療法食は肝機能が低下するような重篤な肝臓病においてのみ使われます。ALTやALPが高いという理由だけで使ってしまうと9割方逆効果となります。
   

腎臓病用と尿石用(下部尿路用)は全く異なるフードなのですが、「尿に関係するからだいたい同じ」「下部尿路と書いてあるから腎臓に良さそう」「下部尿路用療法食を食べさせているから腎臓病の治療にもなっているはず」と誤解している方がほぼ全員のようです。途中から間違ったものを買い続ける方もいらっしゃいます。病気を理解していないのであれば自分で買わないほうがよいでしょう。
   

アレルギー用療法食は健康に害はありませんが、効果判定が非常に難しいです。必ず病院で診察を受けながら使ってください。効果がないのに続けているとお金が無駄になります。他のフードとの併用は無意味な使い方です。
   
間違った療法食を食べさせても目に見えて体調が悪くなるわけではありませんので、間違いには気付きません。時間が経ってから後悔することになります。
   
   

療法食の値上がりについて

どの会社の製品もここ1〜2年でものすごく値上がりしました。それでも必要性があれば使わなければいけませんが、上述のように無意味に使っている方も多いようです。
   
目先の安さを優先して自己判断で使うよりも、病院に相談しながら必要なものだけを使うほうが節約につながるのではないかと考えております。
   
   

ネットと病院の価格差について

一般的には病院よりもネットのほうが安いです。これはネット業者がどこかの卸業者から安く仕入れているためです。病院が暴利を貪っているわけではありません。
   
一方で、最近は病院よりもネットのほうが高いという逆転現象も起きています。ネット価格は需給しだいでかなり変動するようです。
   
Amazonなら絶対安いだろうと思われるかもしれませんが、そうとは限りません。特に、ドクターズダイエットに関しては定価よりも明らかに高いです。気付かずに買っている方はたくさんいらっしゃいますが、これは自業自得です。
   
また、ヒルズに関してはネット業者の仕入れ価格が変わったようで、どのサイトも総じて爆上げされました。今までどれだけ安く仕入れていたのでしょうか。現在はネットよりも当院のほうが安いようです。
   
   

療法食販売の利益

当院は、療法食は10〜18%offくらいで販売しております。病院ではふつうは定価販売なのでしょうけれども、ネットとの価格差が2〜3割もあるとさすがに病院で買えと言うのも申し訳ない気がするので安くしております。
   
病院での療法食販売は利益が小さく、はっきり言ってどうでもいいレベルです。在庫の保管場所も必要で割に合いません。そのため、ネットでの購入を推奨している病院もあるくらいです。
   
しかし個人的には、売上よりもモチベーションというものが大事だと思っております。療法食の説明をして、病院で買っていただけるとモチベーションが上がりますし、逆に他で買われるとモチベーションが下がります。他で買う方に対して親身に説明する気にはなりません。
   
「療法食の名前だけ教えてください」「ネットで買うのでサンプルをください」「ネットで買いそびれたので1日分サンプルをください」などと平然と言ってくる方もいらっしゃいますが、そう言われるとイラッとする獣医師は多いと思います。イラッとさせても何も得はしませんので、ネットで買うにしても多少は申し訳なさそうな態度を出すことをお勧めします。
   
   

病院またはネットで買う理由

ネットで買う理由は「価格」「利便性」、病院で買う理由は「安心感」「病院との関係性」などでしょうか。
   
「安心感」というのは、「獣医師に状態を確認してもらい、相談もできる」「自分で正しいフードを買う自信がない」といったものです。安心を優先する方は病院で買っていただくのがよいでしょう。ただし、なんでも勧めてくる売上重視の病院もありますのでお気を付けください。「全てお任せします」「良さそうなことはなんでもやってください」「お金はいくらでもけっこうです」などと言わないほうがよいでしょう。
   
「病院との関係性」というのは、「病院に世話になっているから病院で買う」「本当はネットで買いたいけど気まずかったり怒られたりするから病院で買う」といったものです。前者はよいのですが、後者は損した気分を引きずるのでよくない気がします。
   
   

指導料について

病院で買うメリットとして、「病院価格は指導料込みの価格であり、病院で買えば無料で相談・指導をしてもらえる」といったことがよく言われます。しかし、毎回相談するわけではありませんので大したメリットとは感じないかもしれません。私もそう思っております。
   
指導料や相談料は、本来は個別に発生するべきものと考えられます。「処方箋料のようなものを請求」「指導した時だけ指導料を請求」などのシステムがあればよいのですが、現状はほとんどの病院で取り入れておりません。これは、もともとは病院で買うのが当たり前だったということと、病院が相談料を請求するのが苦手であるということが関係しているように思います。
   
病院で相談してネットで買うという行為は「責任を伴うタダ働き」をさせていることになりますので、呆れられて信用を失う可能性があります。相談するなら病院で買うのが筋でしょうし、ネットで買うなら自己責任でということになるでしょう。
   
   

病院での購入が望ましい

「健康状態の確認」「病院との信頼関係」などを考慮すると、やはり病院での購入が望ましいと言えます。
   
「病院との信頼関係」についてですが、病気の治療においては病院と飼い主の相互の信頼関係が重要となります。
   
病院から信頼されて何のメリットがあるのかと思われるかもしれませんが、例えば「強めの治療法(劇的な効果が期待できるが若干のリスクを伴う)を選択肢として提示してくれる」「長期的な視点で治療方針を考えてくれる」「患者個別の事情を考慮してくれる」などのメリットがあると思います。
   
「きちんと治療する気があるのかどうか不明」「今後も来院するのかどうか不明」「薬を勝手に止めそうだし副作用が出たらクレーム言ってきそう」などの理由で信頼されていない方は、一般的なアドバイスや短期的な対症療法しか受けられないかもしれません。
   
療法食を病院で買い続けると、おそらくそれだけで病院から一定の信頼を得られるのではないかと思います。考えようによっては安いものとも言えるでしょう。
   
なお、信頼関係は療法食だけで決まるわけではありません。例えば「遠くから来院している」「療法食以外の治療も熱心に行っている」などの場合は話も変わってくるかもしれません。
   
   

当院で購入するメリットについて

個人的には「療法食を病院で買うのは当たり前」とは思っておりません。ネットでも買えるところをわざわざ病院で買う方に対しては一目置きますし、損をさせないようにしなければということも考えます。かといって、診療内容や診療費を明確に変えるわけにもいきませんので難しいところです。
   
「より親身に対応する」「何かあった時(時間外など)に融通を利かせる」などの配慮はしております。また、私は診療費負担を減らす苦心をするほうなのですが、療法食を他で買っている方の診療費は心配する義理はない気がしております(治療はもちろん責任持って行います)。
   
結論としては、「相談をしたい、最善の治療をしてほしい、何かあった時もこちらで対応してほしい」という方は当院で買うのがよいでしょうし、「相談はしない、そこまで親身に対応してもらわなくてかまわない、安ければいい」という方はネットで買うのがよいのではないかと思います。
   
   

まとめ

・療法食には健康上のリスク(無意味、逆効果など)があります。動物病院で相談しながらの使用が望ましいです(その場合は動物病院で購入してください)。
   
・動物病院以外での購入は自己責任です。健康に悪影響が出る可能性もありますのでご注意ください。
   
・「動物病院で買いたい気はあるけど高くて損するだけじゃないか」と思われている方がもしいらっしゃいましたら、「実はそうでもない(少なくとも当院においては)」ということをご理解いただければ幸いです。

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