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院長コラム
2016/03/19
【コラム】犬と猫のフィラリア予防(予防率、予防の是非などに関して)

 フィラリアは、犬が蚊に刺される際に感染するかもしれない寄生虫です。感染後の治療はリスクが伴いますので、予防が重要となります。

 東京ではフィラリアの数が少ないため、現状では運が悪いと感染するという程度かもしれません。ただ、それ以外の地域(千葉などでも)では容易に感染しますし、東京でも運が悪いと感染します。
 数が少ないとはいえ、東京にもフィラリアは存在します。例えば、郊外の愛護団体から譲渡されて移動してきた犬では最初からフィラリア陽性であるケースが多いです。当院では過去4年間で6頭いました。譲渡犬は増えていますので、同時にフィラリアも増えているものと考えられます。

 フィラリアに感染した犬や蚊がいるとしても、周りの犬の大半が予防していれば新たに感染は拡がりません。予防率は地域しだいです。犬に対する考え方や所得などに影響されるのでしょうが、一般的に、都会は予防率が高く田舎は低いと言われています。
 試しに当院での予防率を推計してみましたが、結果として概ね4割ぐらいと推計されました。動物病院に来院しない犬(狂犬病集合注射のみ、あるいはそれすら未実施)も相当数いますから、実際にはさらに低いことになり、推定3~4割ぐらいでしょう。おそらく23区内では最も低いレベルです。東京は予防率が高いはずなのですが、平井においては当てはまりませんので、自ら予防しないと感染するかもしれません。

 続いて、猫に関しての話です。最近は犬だけではなく猫も予防したほうがいいとあちこちで言われるようになってきました。犬と猫のフィラリア症は様々な点で異なります。猫に関して説明するのはとても難しく、正確に理解していただくことはほぼ不可能ですので要点だけを書きます。

 まず、猫も感染はしますが、本来の宿主ではありませんので犬よりは感染しにくいです。また、感染後に成虫にまで成熟することも少ないです。ただ、成虫にならないから大丈夫というわけではなく、むしろ激しい症状を引き起こすこともあります(一般的な話として、寄生虫は宿主が死ねば自分も死んでしまうため、宿主をあまり弱らせず自分も生きていけるように進化しています。本来の宿主以外に感染するとその調整がうまくいかず、重篤な症状を引き起こすことがあります)。
 猫における症状は、犬と異なり多様です。主に咳が生じますが、食欲不振・嘔吐・突然死などが生じることもあります。嘔吐や突然死からフィラリアの存在を疑うことはなかなか難しく、多くの場合原因不明ということになってしまいます。
 それと関連して、診断が犬と異なり困難です。犬の検査で用いるフィラリア抗原検査キットでは成虫しか検出できませんので、成虫が存在しないかあるいは少数のみ存在する猫では見逃されてしまいます。疑わしい場合は他の検査(抗体検査、X線、超音波)も合わせて行う必要がありますが、それでも確定できない場合があります。
 予防する際には、投薬前の検査は必須ではありません。犬においてなぜ検査するかというと、すでに感染していて仔虫であるミクロフィラリアが存在する状態だと予防薬による副作用が生じて危険だから、という理由によります。猫においては、フィラリアに感染していたとしても仔虫まで存在する可能性が皆無ですので、検査は必須ではないということになります。

 さて、猫で予防するべきかどうかという点について考えてみます。室内飼いの猫であれば、蚊に刺される機会が多くはなく、現状ではフィラリアをもっている蚊も多くはなく、さらに猫では刺されても感染しにくいという条件になります。感染確率は非常に低いと思いますが、ゼロと言えるわけではありません。万が一感染した場合には重篤な症状を引き起こす可能性もあります。
 あとはリスクをどのように捉えるか、考え方しだいです。予防するに越したことはありませんが、費用は掛かります。お金が有り余っているならいいのですが、そうでない方が多いと思いますので、他の健康管理や病気の治療を優先したほうがいいのではないかという考え方もあります。
 以下は個人的な見解です。私は、自分の猫にはフィラリア予防をしていませんし、飼い主さんに対しても積極的には勧めていません。飼い主さんに聞かれた場合には、予防しなくてもいいんじゃないでしょうかと答えています。自ら売り上げを捨てるようなことをしていますが、当院はそのような病院であります。
 仮に私が予防を勧めたとしても、大方の飼い主さんはやらないだろうと思います。その認識を変えるために積極的に啓発していこうと思うほどには予防の必要性を感じておりません。ただ、上のほうで書いたように、今後犬のフィラリア感染が増えてくるようであれば考えも変わってくるかもしれません。また、予防を否定しているわけではありませんので、不安だとおっしゃる方には処方しています。

  
 まとめますと、当院では犬のフィラリア予防は強く勧めていますが、猫のフィラリア予防は積極的には勧めていません。猫ではその代わりに他の健康管理や病気の治療をお考えいただければと思います。

 今回も長くなりましたが、最後までお読みいただいた方はありがとうございました。

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