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症例紹介
2016/04/24
症例:猫の歯周病

 17歳の猫です。重度の歯周炎がみられました。血液検査では、BUN:39、クレアチニン:2.2という数値でした。

 高齢で腎臓も悪いことから麻酔リスクが高いと考えられましたが、飼い主さんと相談の上、麻酔下での処置を行うことになりました。

 写真を見ると、後方の大きな歯(というか歯石)に問題があるように見えますが、むしろ前方の犬歯のほうが問題です。歯肉が壊死して歯根部が露出しています。

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 上顎犬歯を抜くと、鼻と口の間の骨が溶けていて大きな穴があいていました。つまり、鼻と口が開通した状態になっていました(口腔鼻腔瘻、口鼻瘻管などと呼ばれます)。

DSCF3706

 穴を塞ぐために、口唇粘膜を切開し、引っ張ってきて縫合しました。

DSCF3715

 粘膜を引っ張ってきての縫合は、大変ですし、離開も怖いので正直なところやりたくないです。しかしながら、やらざるを得ない症例がなぜか多く来院されます(他院で十何万と言われて転院してきた方も何人かいらっしゃいましたが、当院だと最大で6~7万ぐらいでしょうか)。歯石を取るだけでは治りませんし、歯を抜くと穴があきますので縫合も必要となります。歯科専門の病院で処置をしたほうがいいレベルだと思いますが、希望されない場合がほとんどですので自分でやるということになっています。この猫さんは、処置前はくしゃみがひどくて寝られなかったそうですが、処置後は劇的に改善したそうです。

 腎臓が悪い猫の麻酔に関してですが、リスクは高いです。麻酔を乗り切ればそれでいいというわけではなく、麻酔後に腎臓がさらに悪化する可能性もあります。基本的には点滴と鎮痛が重要となります。麻酔前から点滴を行うとともに鎮痛薬を使って麻酔薬の投与量を減らし、腎臓への血流の低下を極力抑えるというのが基本的な考え方になります。この猫さんは前日から点滴を行い、処置後も1日入院してから帰りました。
 もちろん、腎臓が重度に悪い場合には麻酔はかけられません。今回のような場合でも、全面的に麻酔下処置を勧めることはできませんので、リスクとリターンを考慮し、飼い主さんと相談してから決めることになります。

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